16.勘ではなくデータに頼る

情報

~あてになるのは勘ではなく情報です~

 時々私がいく居酒屋があります。

 女将は水商売の経営者にしては決して愛想が良いとは思えない中年女性です。
 しかし、なぜか繁盛しているお店です。
 周辺にある飲み屋さんと比べてみても、いつも混んでいるお店なのです。

 客層は男性中心で老いも若きもサラリーマン風の常連さんの多い店です。
 土曜日に主婦らしいパートさんが一人入る以外は女将が孤軍奮闘しています。しかし、時々一人ではどうにもならないほど混み合う日があるようです。不思議なことにそういう日には若い男性が急遽手伝いに入っているのです。
 不思議に思っていた私がその男性に聞いたことがあります。

「いそがしい時に突然呼ばれるの」
「いいえ、何日か前にメールが入るのです」
「へー、混む日が分かるということは、勘のよい女将さんなのかなー」

「私には分かりませんがなぜか分かるようです」

その男性は近くにある中小企業の社員のようですが人に好かれそうな如才のない若者です。
不思議に思っていた私はあるとき女将に聞いたのです。

「団体客が多いとは思えない人たちで混んでいる日があるようですが、そういう日には〇〇さんが手伝いに入るようですね。忙しくなる日は女将の勘で分かるのですか」
「いいえ、勘だけでは分かりません。ただ、何年間ものデータだけは取っています」
「それを活かしているのですね」

「はい、参考にはしています。当たらないこともありますが・・・」

 成功する経営者の意思決定を支えるのは、勘や決断力だけではなさそうです。どうやら。情報の収集とデータの活用をしているようです。

 いまこの女将は私のアドバイスを理解して労働生産性から人時生産性の管理をしているようです。人時生産性とは労働時間1時間当たりの粗利益高を指標化したもので計算式は次の通りです。

人時生産性=粗利益高÷総労働時間

女将は人時生産性が高ければ時給の高いパートタイマーやアルバイトを雇用できることを学んだようです。やはり時給の高い人ほど客扱いはうまいようです。そのことが固定客の増加に繋がっているのです。

 この店のパートタイマーやアルバイターは曜日によって2日~4日くらい出勤するためトータルするとその顔ぶれは華やかです。

 お客によると「私が金曜日に来るのは〇〇ちゃんがいるからです」と臆面もなく言う客もいます。

時給を高くしたことがプラスに働くことがまだあります。パートタイマーやアルバイターの募集に困らなくなったことです。

募集すれば人がすぐ集まるようになったことに加えてここで働く人が友人を紹介することが増えたようです。

経営者にとってパートタイマーやアルバイターの活用は正社員を雇用することと比較するとその有利さには格段の違いがあります。

正社員でもパートタイマーやアルバイターでも労働基準法によって守られることに変わりはありませんが正社員の給与・賞与・法定福利費・有給休暇等を考慮に入れると人件費の総額に大きな差が生じることになります。

経営者にしてみれば時給を高くしてもパートタイマーやアルバイターの方が断然有利なのです。

この女将は時間の許す範囲の中でお客の話を真剣に聞いているようです。お客さんに合わせてのうなずきや相槌は絶妙です。お客は自然に饒舌になっています。お客さんに話をさせることに関してはこの女将は営業マンのお手本のようです。

 このお店は一人で来店するお客が結構多いようです。どうやら単身赴任で夜の時間を持て余しているお客も少なくないようです。

 この女将のしたたかさは、さりげなくお客とお客の間を取りもっていつの間のか「お友だち」にさせてしまうことです。単身赴任の常連同士が古い友人のように談笑できることはお客にとっても有意義であり女将にとっても手間が省けるメリットが生まれているようです。

 期せずしてこの女将は有能な経営者であり、営業マンであり、優秀なコネクターでもあるようです。

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