~成功を強くイメージするからへこたれないのです~
「孤軍奮闘・苦心惨憺の連続。これでは経営者という仕事は割に合わない」
「雇用されている身でも飯は食えるはずだ」
「もっと気楽に生きる方法はないものか」
かつて事業が苦しかった時期の私は瞬間的にはこんなことも頭をよぎったものです。
それでも地方公務員から経営者の道へ飛び込んだことを後悔したことはありませんでした。
それは、「たった1回きりの人生を全力投球して成功してみせる」という夢を見て経営者の道を選んだからです。
それに、自分を信じてついてくる社員のことを考えると弱音を吐くことなどはできなかったからです。
しかし、困難に遭遇しているときはお先真っ暗で「進むも地獄、退くも地獄」の状態が続くものです。
似たような思いを経験した中小企業の経営者は私だけではないと思います。
いつの間にか成功らしい成功もできないまま敬老会からお呼びのかかる歳になってしまった私ですが、正直なところいまだに夢を持っていることも確かなのです。
最近の私は「夢を持っているうちは老いない」と自分に言い聞かせています。
話が私事に及んでしまいましたが、誰しも成功の結果をイメージすることがはかり知れないパワーになることは確かなようです。
成功の暁には名声はもちろんのこと経済的な果実、社会的な貢献、そして何よりもその達成感はいかばかりかと思うのです。だから頑張れるのです。
成功を夢見てもコストはかからないし、誰かに迷惑をかけるわけでもありません。
成功するという夢がパワーになるとするならこんなに良いことはないはずです。
技術者として長いことトンネル工事の経験を積んできたある老人の言葉が耳に残ります。
「私が暗黒の世界でひたすら穴を掘り続けてこられたのは貫通できた穴から見る向こう側のあの光を思い浮かべるからなのです」と過去を懐かしんでおられました。
私は志半ばで経営者の道を断念した人を何人か知っています。それはそれで精一杯事業に専念したことがその後の人生の糧になっているようです。
しかし、柄にもなく経営コンサルタントに転身した私は、経営者としての喜びと苦労のおすそ分けをしてもらって今日までやってまいりました。
私はいまでもあの頃を思い出すことがありますが「成功のイメージ」の鮮明さはまぶしいばかりでした。あのイメージを追いかけて日夜奮闘していた頃が懐かしいばかりです。
私は夢を現実のものにすることに焦っていたのです。
私が連帯保証していた友人の会社が不渡り手形をもらったことによる倒産のあおりで自分の会社も任意整理する羽目に陥ったのですが、負債のなくなる自己破産をしなかったのは私に残されていたプライドがあったからでした。私に保証債務を背負わせた友人は私には謝りましたが男らしく不渡りを出した相手に対する愚痴は一言も漏らさなかったことを覚えています。
私が連帯保証人になったことは必然でした。自分も相応の連帯保証をしてもらっていたからです。金融機関が嫌うところの「相保証」でした。なぜ連帯保証をしたのかと問われれば「自分の力以上の事業をしたためだ」というほかはありません。
自分の焦りで身の丈以上の仕事をやろうとしたから他人の保証が欲しかったのです。ゆえに自分も相手の保証人になるのは当然のことであったのです。
経営コンサルタントになった私はこれまで何人かの経営者に対して「そんな思いまでして事業を続けたいのですか」と問いただしたいこともあります。
多くの経営者が危機に瀕した時、自分の会社を守りたい一心から必死に頑張るのですがそのルーツをたどれば「輝かしい成功のイメージ」がスタートさせたはずです。
誰も失敗したくて失敗する人はいません。
中小企業の経営者が、苦しみに耐えて、恥を忍んで、必死にがんばるのはかつて輝かしい夢を見たことへの代償なのかもしれません。


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